2013年4月23日火曜日

【授業メモ】学術論文の書き方とその指導法


学術論文の書き方とその指導法 -大学教員を目指して-
2013.04.17(Wed)

(修士課程も二年目に入りました。圧倒的な勉強不足であることを日々感じています。)


1. 本講義で

 アカデミックライティング(以下、AWと略)の手法をしっかりと身につけることは、学術論文を完成させる上で必要不可欠な条件であると考えられています。その証拠に、大学の講義(本講義も含む)や学術論文などで、AWは大きな学問・研究分野の一つとして取り扱われています。その理由としては、AWの醍醐味が、「社会のための活動」であるのと同時に、「自分の興味関心や知的好奇心を満たすための活動」であるからではないか、と考えられます。自分の私的な好奇心の対象と、公の求める利益が合致した際には、その学術論文は大きなインパクトをもって社会に受け入れられるものとなるでしょう。当然のことながら、その習熟には適切な指導や助言、練習の必要があることは自明であります。Swales and Feak (2012)は、AWの手法を身につけることの必要性について”Understanding your writing strategies is important in becoming of a confident writer.” (p.3) と言及していますが、これは同時に、本講義を通じて身に付けるべき技術や心構えを端的に表したものと言って差し支えないと思います。彼らは、その”writing strategies”をさらに6つの下位カテゴリに分けています。各講義の時間において取り扱われるであろう内容と合致しているかを照らし合わせつつ、それらのカテゴリの概略を簡単にまとめてゆきます。

2. 6つのカテゴリから見る本講義の特性
2.1 読み手(Audience)
学術的内容の読み手として、手元にある論文が主張する動機や筋書き、データなどが”受け入れ可”なものであるかどうか判断することは、他者の視点を取り入れる良質な訓練となるでしょう。本講義においては、主に後半の実践的・査読的なグループワーク活動(丸山先生担当)を通じて、専攻や国籍が異なる人物が書いた学術的文章に触れる機会が多く提供されると予想されます。学術的なことばのシャワーを大量に浴びつつ、多彩なバックグラウンドを持つ人々が、それぞれの読み手の視点から良し悪しを議論する、この授業ならではの貴重な機会であると言えます。


2.2 目的(Purpose)
       2.1とは逆に、読み手に何を伝えたいのか、という目的を明確にするために、書き手の視点からも読み手の求めるものを予測しなくてはなりません。その際に、書き手側の立場や知識量を読み手側と比較し、予想を立て、各々のレベルに合わせたわかりやすい表現の使用や、語彙の選出を心がける必要があります。もし、読み手側の知識が書き手側のそれを上回っていれば、より新しく有益な情報にフォーカスした、過不足ない専門的な情報の提示が求められますし、逆に一般の読者をも想定するのであれば、基本的な説明を配置するなどの配慮が求められることとなります。本講義では主に後者を想定した指導が行われるようですが、普段から同じ専攻内の人々とのみ原稿を見せ合い、議論しがちな私達にとって、自信に満ちた「研究の目的」が専攻外の人間にどう映るのか、その現実を知ることが出来るのではないでしょうか。

2.3 構成(Organization)
学問分野によっても異なりますが、その分野に合致した、読者にとって読みやすい構成を考える訓練が必要です。とりわけ、今回は知識が十分でない読者をも想定する必要があります。つまり、普段から用いている文章の構成ストラテジーが、果たしてその専門外の人々にとって読みやすいかどうか、再検討する必要があるということです。Swales and Feak(2012)でも述べられている、代表的な構成ストラテジーの例としては、”Problems-Solutions”、”Situation-Problem-Solution-Evaluation”、”Comparison-Contrast”、”Cause-Effect”、”Classification”などが挙げられます。一概にこれこそが優れた構成であるとは言えませんが、そのヒントを与えてくれる講義として「混沌から線へ」(柳瀬先生担当)などがそれに当たるものと考えれられます。

2.4 文体(Style)
AWを行う上で、論を進める際の文体表現が適切であればあるほど、書き手の意図や動機などが読者にとって分かりやすくなります。読み手がどのような人物で、書き手である自分としてはどのような意図や動機や結果を伝えたいのか、という2つの変数によって大きく左右される項目であると言えます。具体的には、文体そのものの丁寧さの度合いや、語彙の選択基準などが大きなウェイトを占めます。個人的には、実際の日本語における文体指導を十分に受けた経験がないため、本講義における「日本語の文法」(柳沢先生担当)の時間などに、テクニックや留意点などについての知識を得たいと思います。

2.5 流れ(Flow)
1つのパラグラフや文章の中で、考えが明瞭に繋がっていると感じさせる文章は、AWに欠かせない要素であると言えます。それらを身に付けるためには、文脈や主張の繋がりに適った接続詞や句読点の使用、旧情報から新情報への読者の負担が少ない提示の仕方など、普段から意識せずに文章を組み立てているだけでは得られない「テキスト内の流れ」に関する知識を得ることであると言えます。このことで、伝えたい内容そのものやその背景、次の議論へのリンクを読者にわかりやすい形で示すことが可能になります、本講義においては、「わかりやすい文章・文章のための工夫」(柳瀬先生担当)などにおいて、そのエッセンスを学ぶことが可能になるのではないでしょうか。

2.6 提示(Presentation)
完成した学術論文の内容がいかに優れていても、注意していれば防げる初歩的なミスを見逃すことは非常に残念なことでしょう。ざっと例に挙げるだけでも、「パラグラフの文頭と文末にContent-bridgeが架けられているか?」、「(英文の場合)フォーマットはMLAか、APAか、Chicago Styleか?」、「主語-述語は対応しているか?」、「時制は統一されているか?」、「能動態と受動態の使い分けが出来ているか?」、「誤った意味で語句を用いていないか?」など、キリがありません。これらは本講義における特定の授業で取り扱われるテーマとは一線を画したものであり、毎回の課題提出や文献購読の中で、各人が意識的に注意を払い、自他含めた文章から学び取ろうとする姿勢が重要であると言えます。本講義の様に、ほぼ毎回の授業で何らかの学術的文章に触れるとなれば、練習の機会もそれだけ多いということになります。これも魅力的な側面ではないでしょうか。

3. まとめ
このように、この授業全体を通じて、また各回の講義内容を通じて、学術論文をよりベターなものに近づける上で必要な知識を得る機会は、十分に保証されているように思えます。後は、この授業にどのような態度で臨むか、どのように実際の課題に取り組んでいくかは、個人のやる気次第でしょう。私個人としては、この貴重な機会を逃したくありませんし、難しい課題においてもベストを尽くそうと考えています。また、研究者志望ではありませんが、AWの知識を今後の社会人生活でも役立ててゆこうと考えている所存です。


参考文献

Swales, M, J,. and Feak, B, C,. (2012). Academic Writing for Graduate Students: Essential Tasks and Skills 3rd edition. The University of Michigan Press

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